「交通インフラ」
空路復旧せず、帰島は海路に限定


先行帰島する役場職員一行(17日夜、東京・竹芝桟橋=撮影:吉川忠行)
【ライブドア・ニュース 27日 東京】 ─ 避難解除に向けて業務再開の準備のため、平野祐康・三宅島村長ら役場職員一行は年明けの19日早朝、東京・竹芝桟橋から出港した八丈島行きの定期船で三宅島に到着した。東京と三宅島間への交通手段は海路のみ。その海路も天候によって閉ざされてしまう。有害ガスの影響で、災害前にあった空路の再開のめどは立たない状況だ。交通手段が限定されている限り、復興がままならないとの声もある。

 村長ら一行は当初、17日早朝の到着を目指した。だが、悪天候で16日夜発の定期船が欠航。17日夜に定期船は出港したものの、翌日2度に渡って三宅島に接岸を試みたが、高波に阻まれた。一旦、東京に引き返し、翌朝ようやく三宅島にたどり着いた。島周辺では、例年12月から3月までの冬場は海が荒れ、定期船の2割程度は接岸を断念せざるを得ないという。

 噴火前は、全日空が毎日2便の飛行機を運行し、羽田と島を45分で結んでいた。だが、島の空港は立ち入り規制されている「ガス高濃度地区」に位置しているため、復旧のめどは立っていない。当面の間、島民の「足」は海路のみに頼ることになる。通常、海路だと東京・三宅島間は7時間かかる。避難前に観光業を営んでいた男性は、「飛行機は便利。船だけでは当面客足も遠のく」と島の経済への不安をぼやく。

 ただ、民間で新たな海路を開く動きもある。既存の定期貨物船に加え、村民の帰島に合わせ、海運業の新島物産(本社・東京都新島村)が、東京・三宅島間の定期貨物船の運航を、避難解除予定の2月1日から開始することになった。今回就航するのは、同社所有の貨物船2隻で、週3回(火・木・土)、新島経由の運行となる。

 伊豆諸島の他の島に避難して、事業を続けていた自営業者などからは、「島に直に荷物を送れるルートがもう一本できた」と喜ぶ声も少なくない。【了】

ライブドア・ニュース 常井健一記者

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